本を読み終えて、いちばん最後のページに小さな文字でまとめられた欄を見かけたことはありませんか。その「本の最後のページ」に置かれた情報欄が、奥付(おくづけ)です。はじめて自分の本を出そうとすると、「ここに何を書けばいいのだろう」と少し手が止まる方が多いところでもあります。この記事では、奥付とは何かという基本から、書いておきたい記載項目、自費出版での書き方や見本、よくある疑問までを、私の方で順番に整理してお伝えします。
奥付とは|本の最後のページにある情報欄
奥付とは、本の巻末(いちばん後ろのページ)に置かれる、その本の「素性」をまとめた情報欄のことです。「本の最後のページの名称は?」と聞かれたら、多くの場合この奥付を指しています。書名や著者名、発行日、発行者などが小さくまとめられていて、いわば本の身分証明のような役割を持っています。
普段はあまり意識されない場所ですが、読者が「この本は誰が、いつ出したものか」を確かめたいときや、図書館・書店で本を管理するときに参照される大切な部分です。昔の和書では巻物の終わり(奥)に書き付けたことが名前の由来とされています。今の本でも位置は変わらず、最後のページに静かに置かれているのが一般的です。商業出版でも自費出版でも、本という形にする以上は基本的に備えておきたい要素だと考えてください。
奥付に書く記載項目
では、奥付には具体的に何を書けばよいのでしょうか。決まった法律上の様式があるわけではありませんが、一般的に載せておくと本らしく整う項目はおおよそ決まっています。次の項目を目安にすると、過不足のない奥付になります。
- 書名(タイトル・サブタイトル)
- 著者名(必要に応じて編者・訳者・監修者)
- 発行日(初版発行日。版を重ねたら「初版第2刷発行」などの版数・刷数)
- 発行者・発行所(出版した個人名や会社名)
- 印刷所(印刷を担当したところ)
- ISBN(流通させる本の場合)
- 定価(販売する本の場合)
- 連絡先や著作権表記(必要に応じて)
すべてを必ず埋めなければならない、というものではありません。たとえば家族や知人に配るだけの非売品なら、定価やISBNは省いてもかまいません。逆に、書店やネットで販売したい本であれば、ISBNや発行所はきちんと記しておくと安心です。自分の本がどこまで届く本なのかを思い浮かべながら、必要な項目を選んでいきましょう。
自費出版での奥付の書き方
自費出版の場合、奥付は基本的に著者自身が用意することになります。といっても難しく考える必要はありません。原稿の最後に1ページ分の余白を取り、先ほどの項目を縦書き・横書きのどちらか本文に合わせて、中央や下寄せで静かにまとめれば十分です。装飾は控えめにして、文字を読みやすく並べるのが基本になります。
発行所の欄で迷う方が多いのですが、ここには本を世に出した主体を書きます。個人で出す場合は著者名や屋号を書くこともありますし、出版サービスを利用する場合はそのサービスの規定に従う形になります。発行日は、実際にその本ができあがった月をめやすに記しておけば問題ありません。
ISBNをつけて流通させたい場合は、ISBNの取得とあわせて奥付に番号を記載します。費用を抑えてISBN付きの紙の本を作りたいときは、たとえば MyISBN のような自己出版サービスを使う方法もあります。こうしたサービスでは、奥付に入れる項目の一部が自動で整えられることもあるので、何をどこまで自分で用意すればよいかは事前に確認しておくと安心です。最新の対応内容は公式サイトでご確認ください。
奥付の見本・レイアウト例
言葉で項目を並べても、実際の形が見えないとイメージしづらいかもしれません。ここでは、もっともシンプルな奥付の見本を文字で示してみます。実際の本では、この内容を最後のページの下半分あたりに、静かに置く形が一般的です。
本のタイトル
サブタイトル2026年5月 初版第1刷発行
著者 山田 太郎
発行所 〇〇出版(連絡先)
印刷所 〇〇印刷株式会社
ISBN978-4-XXXXXXX-X-X
定価 1,200円(税別)
縦書きの本なら、この内容を縦組みにして右から左へ読む形に整えます。横書きの実用書やビジネス書なら、横組みのままで問題ありません。大切なのは、凝ったデザインよりも、誰が見ても項目が読み取れる素直なレイアウトにすることです。行間を少しゆったり取るだけでも、ぐっと読みやすくなりますよ。
商業出版と自費出版で奥付はどう違う?
奥付に書く基本項目は、商業出版でも自費出版でも大きくは変わりません。違いが出やすいのは「発行所」と「責任の所在」の部分です。商業出版では出版社が発行所になり、編集・校正・流通までを担います。奥付にもその出版社名が入ります。
一方、自費出版では著者自身(または利用した出版サービス)が発行の主体になります。そのため発行所の欄に何を書くかは、どの方法で出すかによって変わります。個人名や屋号を入れる方もいれば、サービスの規定に沿って記載する場合もあります。どちらが正しいというより、自分の本をどんな立場で世に出すのかを表す欄だと考えると、迷いが少なくなります。
MyISBNで出版する場合の奥付の自動付与
MyISBNで出版する本については、奥付にあたる項目の一部が自動的に追加されます。下のような形が入ると、ぐっと本らしさが増します。なお自動で追加されるため、ご自身の原稿には下記の項目は重ねて入れないようにしてください。
書籍のタイトル
2013年5月 初版発行
2014年8月 初版第2刷発行
著者 著者名
発行所 デザインエッグ株式会社
{ISBN}
{ISBN}の部分には、その書籍個別のISBNが表示されます。奥付の体裁を一から組むのが不安な方にとっては、こうして基本の枠が用意されているのは心強いところだと思います。自分で書き足したい情報がある場合は、本文の最後に自然な形で添えておくとよいでしょう。
テンプレートとして使えるWordファイルも用意されています。Wordファイルでダウンロードして、ご自身の本に合わせて整えてみてください。
電子書籍の奥付はどうする
電子書籍にも、奥付にあたるページを入れることができます。紙のように物理的な「最後のページ」はありませんが、本文の末尾に書名・著者名・発行日・発行元をまとめた一画面を置くのが一般的です。考え方は紙の本と同じで、誰がいつ出した本なのかを残しておくイメージです。
電子の場合は版を更新しやすいので、内容を改訂したときに発行日や版数を書き換えておくと、読者にとっても分かりやすい記録になります。紙と電子の両方で出す予定があるなら、奥付の文面を先にひとつ作っておくと、どちらにも流用できて手間が減ります。
奥付づくりでよくある疑問(FAQ)
最後に、奥付について読者の方からよくいただく疑問を、いくつか整理しておきます。迷ったときの参考にしてみてください。
奥付は必ず入れないといけませんか
法律で一律に義務づけられているわけではありませんが、本という形に残す以上、いつ・誰が出したのかが分かる奥付はあったほうが親切ですし、後から本を探す人の助けにもなります。非売品でも、最低限の書名・著者名・発行日だけは入れておくことをおすすめします。
発行日はいつにすればいいですか
基本は本ができあがった月をめやすにします。後から増刷したときは、初版の日付を残したまま「第2刷発行」の行を追加していくと、その本がどれだけ読み継がれてきたかが分かる記録にもなります。
非売品でもISBNや定価は必要ですか
販売しない本であれば、ISBNや定価は省いてかまいません。逆にAmazonや書店取寄で販売したい場合は、ISBNを取得して奥付にも記載しておくと流通の面で安心です。自分の本をどこまで届けたいかで判断してみてください。
奥付は小さなページですが、本の最後にそっと置かれた、作り手の名刺のようなものです。あなたの本が誰かの手に渡ったとき、ここを見て「この人が作った一冊なんだ」と感じてもらえる。そう思うと、少していねいに整えてみたくなりませんか。